スペシャル対談 第2

百武 朋
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かづきれいこ

メイクのさらなる可能性を追求して

映画などの特殊メイクにかづき・デザインテープを6年ほど前から取り入れてくださっている百武さん。
メイクによって新しい世界を広げ続けてきた2人だけに、話の尽きない対談になりました。

百武 朋(ひゃくたけ とも)氏

特殊メイク・特殊造形・キャラクターデザイナー

タッキーが実際に使ったマスクに大興奮!?

かづき
今日はよろしくお願いいたします。百武さんとの出会いは、スタッフの方がサロンにいらしてくれたことがきっかけでした。気になって声をかけると、特殊メイクなどにデザインテープを使ってくださっているとお聞きして。すごく嬉しくて、百武さんご本人にもお会いしたくなり、その後、サロンでお話させていただいたら、本当に興味深くて。
百武
今日は、実際に映画などで使ったマスクを参考までにお持ちしたんですよ。これは『こどもつかい』という映画で使ったマスク。主演の滝沢秀明さんが使っていたものです。
かづき
すごい! 私、見ました、その映画。百武さんがメイクをされていたんですね。
百武
はい、そうです。そして、これも……。
かづき
知ってます!『20世紀少年』の「ともだち」のマスクですね。百武さんが関わった作品を教えていただくと、見ているものが多くて驚かされます。
百武
「ともだち」マスクは、最初、美術さんが直接役者さんに布を巻くようにしたいと言ったのですが、同じものが3つ必要だったので、シワの位置が全部同じになるようにマスクを作ってマークを手描きしました。
かづき
手描きなんですね!
百武
印刷などでは無理なんです。のぞき穴も必要なので、一部だけ薄くしています。原作ファンもとても多い作品なのでイメージが違わないよう、とてもこだわって作りました。


中央右『20世紀少年』の「ともだち」、左『こどもつかい』で滝沢秀明さんが使用したマスクの実物。百武さんのこだわりと配慮が細部に感じられます。

デザインテープを特殊メイクの下地に

かづき
デザインテープは、どんなふうにお使いくださっているのですか?
百武
実は、デザインテープを使ってメイクしているのを実際に見ていただこうと思って、道具なども持ってきました。
かづき
え!? 見せてくださるんですか!? うれしい!
百武
今日は手に傷を作るメイクをしますが、デザインテープは下地として使います。あらかじめ貼っておくと肌を保護することができるし、その上に傷などを描いたりペイントしたりしやすいんです。
(メイクの詳しい様子は後半でご紹介しています)
さぁ、これで完成です。
かづき
本物にしか見えない!しかも10分くらいであっという間!
百武
この傷はできたての設定ですが、作品によっては、こうした傷を2週間後とか5年後とかの傷に変えていくこともあります。その場合は、傷の形態をそっくり写し取って、その色を変えていくんです。ちなみに、デザインテープを使っているので、落とす時はラクですよ。肌荒れもしにくいし、メイク時間も短縮できて、テープを貼っていることもわからない。役者さんの負担も軽減できるので、すごく助かっています。


実はホラー映画が大好き!百武さんが参加した作品もほぼ観ていたことが分かり、びっくり。撮影時のウラ話も聞かせていただきました。

かづき
お役に立ててとても嬉しいです。百武さんが作品にテープを使うようになったきっかけは?
百武
実は、ずっとこういうものがないかと探していました。妻がテレビ番組で、かづき先生がアザをきれいに消すところを見ていて、俳優さんのシミやタトゥーなどを消すのに役立つのでは?と提案してくれたんです。購入しに行き、貼り方やメイク法を聞いて使い始めました。今ではいろんな使い方をしています。
かづき
そうだったんですね。テープを特殊メイクの下地づくりとして使う以外には、どんな使い方をされているのですか?
百武
以前『死神くん』というドラマで女優さんをタレ目にしたいとリクエストがありました。でも、いかにも特殊メイクという風にはしたくないと言われたので、目元にテープを貼って目の印象を変えました。また、別の映画では、ちょっと年配の俳優さんをテープで少しリフトアップして、シワで傷をつくる方法を選びました。そうすると若くなって見栄えも良くなるし、傷も作れて一石二鳥。俳優さんもとても喜んでくれて、次の作品でも使いたいからテープの使い方を教えてほしいと言われました。演技にもプラスになっていると思います。

メイクの常識を超え新たな表現にも挑戦

かづき
嬉しいですね。歌舞伎の女形さんや舞台女優さんにも使っていただいていますが、若い役も変わらず続けることができると、好評です。ショップにいらしてくださるご婦人たちも上手に使いこなしてくださっている方が多いんですよ。どうやって貼ろうかと考えたり、指先を器用に使って貼ったりするのは、脳活にもなると思うんです。見た目がきれいになって、脳にもいい。これってすごいアンチエイジングですよね。


百武さんの創作力や確かな技術力に魅せられた名だたる監督・プロデューサーからのオファーが絶えず、すでに来年・再来年も大忙しとか。

百武
本当にそうですね。私自身も、テープを使って監督や俳優さんからの要望に応えたり、自分でもさらに画期的な使い方を考えたりするのはとても楽しいし、勉強にもなります。
かづき
私は今、メイクのその先の道を切り開いているところです。公益社団法人を作って、メイクの検定制度を始め、医療や福祉の現場などで活躍できる人をどんどん育てていきたいと考えています。
百武
それは素晴らしいですね。私もデザインテープを使ってもっといろいろな表現をしていきたいと思います。今度ぜひ、撮影現場にも来てください。
かづき
それはとても楽しみ! 今日はありがとうございました。

手の甲に傷を作る場合の
メイク方法

映画や舞台などで行う特殊メイクの
手法をご披露いただきました


  • テープは傷メイクの下地として使うため、傷よりも大きめにカット。

  • 傷を作る位置を決め、テープを貼りなじませます。

  • テープを貼った上に傷を貼り、水分を含ませなじませていきます。

  • 傷口部分に顔料でペイント。傷ができた時期によって、色なども変えていくそう。

見ているだけでも痛々しいほど! 完成にわずか10分とあっという間でした。作品によっては、長期間毎日メイクをし続けるので、肌に負担がかかりにくいテープはとても役立つそう。。

※傷は事前に制作。今年公開予定の映画『八王子ゾンビーズ』で使用の傷と同じものだそう

傷メイクを落とす時はテープをはがすだけでOK!

百武 朋(ひゃくたけ とも)氏 プロフィール

特殊メイク、特殊衣裳・造形、デザイン。
2004年(株)百武スタジオ設立。主な参加作品に、『CASSHERN』『妖怪大戦争』『20世紀少年』(ともだちマスク制作)、『テルマエ・ロマエ1、2』『ライチ☆光クラブ』『ミュージアム』『シン・ゴジラ』『こどもつかい』『東京喰種 トーキョーグール』『あゝ、荒野』『映画刀剣乱舞』ほか、2020年公開予定の『犬鳴村』『八王子ゾンビーズ』、2021年公開予定の『シン・ウルトラマン』にも参加。また、『滝沢歌舞伎』『刀剣乱舞』等、舞台の特殊衣裳デザイン・造形も手がける。

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